はじめまして。主に変態、故に読書家、北大で変態文学を学びながら変態活動に勤しむ変態文学大学生の吉行ゆきのです。
この度『エロトゲス』の編集兼ライターとして活動することになりました。
元々趣味で、全国各地、たまに海外などに出没し、謎の変態世界や聖地巡礼をしていたので、嬉しい限りです。
みなさん、「秘宝館」というものをご存知でしょうか。
私のような拗らせ変態はもちろん、私の愛する「おじさん」たちなら誰でも知っているはずです。
が、実際同年代の友達に聞いてみたところ、チラホラ知らない人が・・・
「秘宝館は観光産業と結び付いた性の展示であり、等身大人形が含まれているのが大きな特徴」
妙木忍『秘宝館という文化装置』
「訪問者が参加するタイプの動的な展示を備えているのも特色の一つ」「情報源の役割を担うよりも、むしろ「参加する」アミューズメントとして成立」
妙木忍『秘宝館という文化装置』
こちら、我らが北海道大学にも在籍していた妙木忍教授の『秘宝館という文化装置』の中での「秘宝館」の説明です。
最近テレビで話題の「珍宝館」の先がけ的な、「性のアミューズメント」的な観光スポットをイメージしていただけるでしょうか。
そして、
「秘宝館は一九七〇年代から八〇年代にかけて主として温泉観光地に開館し、人気を博した」「北海道から九州まで少なくとも二十館存在していた。一九九〇年代以降に衰退」
妙木忍『秘宝館という文化装置』
とあるように、2022年11月現在、アミューズメント性重視の「秘宝館」は、熱海秘宝館ひとつしか残っていません。
知らない人も多いわけです。
しかし、そんな令和の時代に、当時の秘宝館の様子を色濃く受け継ぎつつも、新たな試みの場として機能している怪しげな場所が存在するのです・・・
大塚に・・・!
今回そんな大塚の素敵スポット「ニュー秘宝館」さんに潜入し、オーナーである片品村蕃登(かたしなむら ほと)さんにインタビューをさせていただきました!
大塚のディープスポット「ニュー秘宝館」
JR大塚駅から徒歩5分、紫色の屋根が光る怪しげなお店・・・
それが「ニュー秘宝館」!
全国の「秘宝館」から集めた「秘宝」が陳列された店内!
そんな中で、しっかり飲めて、マニアックな話がたくさんできる素敵空間!
有料で貴重な資料の閲覧もできるヨ!
取材前に普通に一回プライベートで行きました!
普通に飲んだくれました!
そして取材後もしっかり飲んだくれました!!!
ノスタルジックかつエネルギッシュ、秘宝館というパワースポット
まずはやっぱり、「秘宝館」に惹かれたきっかけを教えてください!
秘宝館に限らず昔はテーマパークがたくさんあり、幼少期に行った細倉マインパーク(炭鉱のテーマパーク)に似た懐かしさを感じたのが大きいです
「レトロ」さに惹かれたという感じでしょうか?
レトロという自覚はなくて。青春期はインターネットがなく性的な興味を持っても未成年は入手が困難な時代でしたので、大人になり性的なものに慣れてしまい鈍感になる以前の新鮮さを求めているのかもしれません。
他には、昔は至る所に秘宝館があったので、スタンプラリー的にも楽しんでいました。
いつ頃から自分でやってみたいと思うようになりましたか?
北海道秘宝館の持ち主である山本会長との出会いがきっかけでした
山本公正氏ですね。前にお伺いした時にも、「秘宝館」に関わる「人」に惹かれるとおっしゃっていましたね。どんな魅力が?
秘宝館に限らずですがバブル期に大きなお金を動かした人はやはり発想がダイナミックで、現代の考えとは全く違います。その大雑把ではあれどブルドーザーのような経営力には憧れます。
具体的なエピソードはありますか?
山本会長から展示物を買ったときに、いっっっさいまけてくれなかった!笑 金銭感覚がバブルのままなんです!笑
時代に合わせようともしないみたいな・・・笑
しない!笑 でも、北海道秘宝館の解体にお供した時は、料亭など、今まで立ち寄ったこともない場所に連れて行ってもらったりしました!
なるほど、バブリーなおおらかさ、ダイナミックさを感じます!!!
♡教えて変態♡
→秘宝館に用いられた技術は映像技術・舞台技術のスペシャリストたちに作られた、秘宝館外からも評価を受けたハイクオリティなものだったんですヨ!
あと、山本会長は、キャバレー全盛期の頃、初めてピンクサービスありのキャバレーを作った人で、オープン直後一年間休業することになってしまったのに、看板に明かりをつけて広告活動にしっかりとお金をかけていたんです。
SNSが発達した今とはやはり大胆さが違いますね・・・!
「男の遊び」から「大人の遊び」へ
北海道秘宝館といえば、「女性向け」を明示した初の秘宝館であったそうですが、そこに特に惹かれたりはしましたか?
そうですね、女の人がグロいと感じないように「信仰」的な部分を取り入れた秘宝館に、子宝に恵まれることを願って・・・という女性客も増えていたようです。
私の場合ももともと神社巡りも好きだったのでそういう部分では親和性があるのかも。
♡教えて変態♡
→高度成長期に女性が働きにでる=外での自由時間が増えることによって女性客を意識するようにもなったみたいですヨ!パンフレットには「おんなの広場OPEN!!」「世界で初めての“おんなの遊園地”誕生!!」のキャッチフレーズも!
秘宝館が誰にでも楽しめるようになるのは素敵なことですよね
はい、数々の秘宝館を企画・施工してきた東京創研 故・川島社長の狙い通りですので、嬉しく思っています。
「性の遊び」って昔は男性のものだったじゃないですか。今は女性向け風俗とかもあって、そういう流れを作ったものとしていいことだなと思います。
ミスニュー秘宝館という女性の存在
女性といえば、ニュー秘宝館でも「ミスニュー秘宝館」というグランプリをやっていますよね?
はい、コロナ後の世間のテンションが落ちている中で話題性が欲しく、私もちょうど腑抜けていたので創作意欲への喝を入れる為に企画しました。アイデアはミスiDから拝借しています。
わ!わたしも実はミスiDに出て謎の賞を受賞したりしたのですが・・・ということは、既存のアイドル観にとらわれない自由なグランプリなんでしょうか?
はい、グランプリ特典が当店でセットを組みプロのカメラマンに撮影をしてもらい写真集制作をするというものなのですが、そのプロデュースも正統派っぽくないものにします。
写真集はどんな雰囲気ですか?
この展示のショーケースを取り払って、セットを組んで・・・「秘宝館の人形」というイメージです。
変態紳士淑女集う、自己表現の場としての「ニュー秘宝館」
前回お伺いした時、常連さん含めみなさんチンチンひしめく環境の中でもとても理性的で、上品な方ばかりだ・・・と感じたのですが・・・
品のないエロは夜の床でひっそりやってくれと思うのみ。
たしかに!笑 そのような空間を保つために運営の上で意識していることはありますか?
具体的な性と直結しがちなものはあまり置かないようにしています。オナホとかバイブとか・・・
言われてみれば!モチーフ的なものが多いですね!
「ニュー秘宝館」のもう一つの側面でもある、「飲食店」としてのこだわりなどはありますか?
私が飲み歩くの好きなので、居心地がいいようにすべての理想を詰め込んでいます!
それであの固定ツイートのルールなのですね!笑
たしかに、飲み慣れた人にとっては当たり前のことでも・・・ってことはたくさんありますものね
はい、なので、ルールとして掲げるしかない!笑
ニュー秘宝館公式ツイートのこの「ルール」、飲んだくれ的にはごく当たり前なんですが・・・みなさんの酔っ払いリテラシーはどんなものかご確認を!
あと、うちの強みはすべて許可をとってやっていることですね!ロゴ・資料・展示物・トイレのアナウンスすべて・・・
トイレの北海道秘宝館のアナウンス、初来店時とても感動しました・・・!素敵です・・・!
お客さんには、お店は一つのコンテンツとして、自己表現の場としても自由に使ってほしいです。
令和に蘇る「秘宝館」
お店に展示しきれていない秘宝はもしやまだまだありますか?
はい、たくさんあって、自宅の至る所でスペースを取っています。
それをどこかに展示したりは・・・?
はい。いつか本物の秘宝館を作りたいんです。秘宝館に関わった方々、まだ生きている方がいます。皆さん超高齢ですがまだまだ創作意欲は失われていません。
たくさん働いて、またこの令和の時代に秘宝館を復活させたいと思っています。コロナに邪魔をされてしまい今年も去年の尻拭いをさせられているような気持ちですが来年はスッキリ軌道修正出来たらと思っています。
「令和の秘宝館」!それは美術展のような感じでしょうか?
いえ、個人的には秘宝館をアートだとは思いたくない。エンタメですから。なので、当時のそのままの雰囲気でやりたいです。お化け屋敷みたいな笑
なるほど、アミューズメント性重視の当時のままの「秘宝館」ですね!
♡教えて変態♡
日本の秘宝館の特徴は「ユーモア」!アートより「笑い」!参加型の仕掛けが笑いを共有するトリガーとなっているみたいですヨ!
はい、エロに対する新しい感性は特にないですね。笑
海外に「秘宝」を広めたい気持ちなどはありますか?
いえ、あまり目立ちたくないです。笑 いやでも目立つけど、知る人しか知らない、みたいな感じでおさめておきたい、出る杭は打たれるのが日本ですから・・・
ああ・・・そういうのはありますよね・・・私も前に公園でポールダンスしただけでツイッター永久凍結されました・・・
ええ!?それだけで!?(優しい)
はい・・・でも、それじゃあツイッターとかで拡散されるのも苦手だったり・・・!?
いえ、ツイッターは全然!
よかった〜〜〜(既にツイートしてたので)
終わりに
片品村さんの話を聞いていると、バブル世代のゴリゴリの経営者に負けじと強く己が力で道を切り開いていく人間像が見えました。
取材の最後で片品村さんが言っていた、
「性に奔放=仕事バリバリですからね!」
という言葉、富士見ロマン文庫の中で生を存分に謳歌する強い女のようで痺れます・・・
当時そのままの「秘宝館」がしっかり感じられ、才気とパワー溢れるオーナーさんと楽しくおしゃべりでき、飲み屋としてもとっても居心地の良い(取材後普通に数時間飲んだくれて居座りました)「ニュー秘宝館」。
行かない手はないですよ!!!
性こそパワー!!!
お土産に買ったちんちん型口紅はお守りにします・・・
ニュー秘宝館アクセス
開店時間や臨時休業の告知はTwitterメインとのことなので、こちらをチェックしてからGOです!!!!